2023-02-16
独自の行動認識AI技術をもつアジラが、2023年にヒューマンサイエンスに着目した「Human Science AI研究チーム」を設立。
なぜ今、世界トップクラスのAIテクノロジー技術をもつ企業が”人間科学”の研究に取り組むのか。チーム立ち上げ発起人のアジラCTO若狭 政啓氏にインタビュー。
第1回目は、「なぜAIの会社でヒトの研究?ヒューマンサイエンスとAIの新たな繋がり」をテーマに話を伺いました。
アジラは、まだ「行動認識AI」という技術が一般的ではなかった時期から、そのポテンシャルに着目し、独自技術の開発を進めてきました。いままではいわゆる “AI” 、ディープラーニングの技術をベースに「人間の行動を認識する」ことを行ってきたのですが、AIの技術だけではどうしても限界があります。行動認識AIの可能性をさらに広げるためには、AI自体の技術を高めることはもちろんですが、人間の理解や知識をAIに組み合わせていくことが重要です。このような背景もあり、アジラでは、「AIテクノロジー」と「ヒューマンサイエンス」という二つの技術を掛け合わせることで、独自開発の行動認識AIを更に新しい領域にステージアップしていくという目的を掲げ、「Human Science AI研究チーム(以下、HSAR)」の立ちあげに至りました。
AIは基本的に過去のデータを基に分析を行い、結果を導きます。但し、過去のデータがいくら正しくても、本来の人間の行動とは逸脱する結果を生むケースもあります。今までのAIだったら不自然さの残る結果となるところを、人間的な知識を組み合わせることで「それはおかしいよね、本来こうだよね」という修正に繋がるんですね。このように、従来のAIの技術に「人間の理解や知識」を組み合わせることで、今までだととらえきれなかった人間らしい動きまでキャッチすることができるようになり、人の行動に対する理解が「行動認識AI」の精度をより高めると考えています。
HSARでは、「人間の行動に関わること」を中心に様々な研究を行っています。
いくつかご紹介しましょう。1つ目は「歩行分析研究」です。これは、特徴的な動きから「その人が誰なのか」を特定する技術研究開発で、人間の歩き方に関する深い知識が必要とされる分野となっています。従来のAIの場合は、(1)何かデータがある(2)データを覚えさせるという流れになるのですが、アジラのアプローチはそうではなく、歩行分析として人間の歩き方の特徴とどのようなデータが取得できるのかという点に着目します。その人間的なパラメータ、データを基にAIにどのように学習させるのかといった学習方法に注力をしています。
2つ目は「人の軌跡研究」です。軌跡とは人の歩いた道筋のことで、人の動線からを分析する研究です。たとえば、一般的に人は目的地へ向かう時、まっすぐ歩く傾向にあります。しかし、迷いがある人や事件事故に巻き込まれるような強い危機感を感じている人の場合、ただまっすぐ歩くのではなく、少しふらふらとした動きになるなど、状況や心境によって動きに変化が生まれます。このように、人の道筋や歩いた軌跡を分析することで、その人の心理状態を特定するといった研究をしています。ー歩行分析と歩行の軌跡を組み合わせることで、今後様々な解決(犯罪の早期解決や早期治療など)に繋がりそうですね。
アジラが目指す姿は「監視」のツール開発ではなく、あくまで空間価値を向上していくことです。AIとカメラ映像を用いることで、より安心安全で快適に過ごせる空間にしていくための手段として使っていただきたいです。監視ではなく、空間価値の向上に焦点を当てていることは、研究をしている上でも、強く意識して取り組んでいます。
アジラは、「Technology Driven Future」という理念をベースに、全ての人が安心・安全で暮らせる世界を実現するために、日々研究開発を行っています。特に、行動認識AIの分野においては、世界トップになるという強い思いを持ち、研究者やメンバーがチーム一丸となり、常に進化を続けています。
今後は更に弊社の行動認識AI技術の更なる進化を推進するとともに、全てのエンジニアが自身のキャリアを追及し、常にワクワクできるような環境作りの実現に向け、より一層努めて参ります。人間の行動に関するAIに興味ある方、ぜひ一緒に何か形にできればと思っておりますのでよろしくお願いします。
HSARに関するお問合せ: pr@asilla.jp 担当:若狭
2018年に東京工業大学大学院修了後、日揮株式会社に入社。 クウェート国建設現場駐在、プラント設計IT業務に従事。 その後、2020年に株式会社アジラに参画し、行動認識AIに関する製品開発を担当、IVAソリューション事業部統括に就任、2022年4月には執行役員CTO、2023年3月に取締役CTOに就任。