2023-02-16
世界トップクラスの行動認識AIを独自に開発するアジラは、更なるAI精度の向上を目的に2023年2月にHuman Science AI研究チーム(以下HSAR)を設立しました。
本記事では、行動認識AIのステージを大きく変える革新的なアイディア、技術を生み出すためのチームについて、チーム立ち上げ発起人のアジラCTO若狭 政啓氏に伺いました。
HSARでは、人を科学的に研究する「ヒューマンサイエンス」を専門に研究を進めています。この研究チームには、コンピュータサイエンスに精通していることに加え、さまざまな分野に精通するスペシャリストが集っています。例えば、歩行認識精度の向上を目的とする「歩行解析」や、人の脳と行動の構造を科学的に研究する「脳科学」、他には、人物特定の精度向上を目的に「人間の軌跡」などを専門分野とするメンバーが在籍していますね。
歩行解析のスペシャリスト
ヤップ・ミャオ・シン・ロビン氏(シンガポール出身)
・シンガポール国立大学(学士&修士:機械工学)
・東京工業大学(博士:知能工学)
・シンガポール科学技術研究所や東京工業大学にて歩行に関する研究に従事
・HSARでは人物歩容認証に関する研究に従事
脳科学のスペシャリスト
モハメド・アブドルラフマニ氏(イラン出身)
・University of Social Welfare and Rehabilitation Sciences(学士:作業療法学)
・Iran University of Medical Sciences(修士:解剖学)
・大阪大学(博士:認知神経科学)
・大阪大学および理化学研究所にて行動と脳科学の関係に関する研究に従事
・HSARでは行動解析に関する研究に従事
人物軌跡解析のスペシャリスト
ヘシャム・シェハタ氏(エジプト出身)
・Alexandria University (学士&修士:機械工学)
・京都大学(博士課程中退:情報工学)
・エジプト日本科学技術大学にて物理学の教鞭をとった後、京都大学にて人物軌跡解析の研究に従事
・HSARでは人物軌跡解析に関する研究に従事
生体工学のスペシャリスト
サントシュ・クマール 氏(岩手県盛岡市出身)
・トロント大学(学士:生体工学)
・オックスフォード大学博士課程進学予定
・HSARではブランディングや大学連携に関する業務に従事
行動解析のスペシャリスト
トラン・クォン・チュン氏(ベトナム出身)
・ハノイ工科大学(学士:制御工学)
・韓国科学技術院(修士:情報工学)
・HSARでは行動解析に関する研究に従事
人物同定分析のスペシャリスト
ビ・ドゥック・フゥン氏(ベトナム出身)
・ベトナム国立大学ハノイ校(学士:物理学)
・北海道大学(修士:宇宙理学)
・HSARでは人物同定に関する研究に従事
空間情報科学のスペシャリスト
ニティッシュ・ジャイスワル 氏(インド・ニューデリー出身)
・インド工科大学バラナシ校(学士:土木工学)
・東京大学(修士:空間情報科学)
・HSARでは東京工業大学の共同研究員として人物歩容認証に関する研究に従事
コンピュータビジョンのエキスパート
ニラジ・ヤダヴ氏(インド・ジャイプール出身)
・インド工科大学マンディ校(学士:情報工学)
・HSARではコンピュータビジョンアルゴリズムに関する業務に従事
コンピュータビジョンのエキスパート
リー・ウェイ・チャン氏(台湾出身)
・国立中山大学(学士:情報工学)
・国立清華大学(修士:情報工学)
・HSARではコンピュータビジョンアルゴリズムに関する業務に従事
その通りです。HSARには、エジプト、イラン、シンガポール、インド、台湾、ベトナム出身の研究者が所属しており、国籍を超えた多様なバックグラウンドを持つ研究チームとなっています。このような専門分野の異なる多国籍チームであるからこそ、様々な視点や価値観が生まれ、研究の幅が広がることを期待しています。
もちろん、今までのAI研究と異なる「ヒューマンサイエンス」の軸での研究者に声をかけていたのですが、意図的に国籍などバックグラウンドが異なる方を採用しようとしたわけではないんです。アジラの独自技術に価値を感じ、そしてこの研究チームが目指す「行動認識AIを世界トップへ」というビジョンに共感いただいた方が自然と集まり、このチームに至りました。結果として、研究内容も、出身も、歩んできたカルチャーも異なる多様なチームとなったんですね。このチーム、言語は英語で共通ですが、見ている視点はさまざまです。AIに注力していたメンバーとヒューマンサイエンスに特化したメンバーのシナジーは思った以上に良いカタチになりつつあります。
メンバーがそれぞれの分野で情報のアンテナを張り巡らせ、徹底的に論文を読み解き、新しい技術や知識の獲得に注力しています。そのような感じですが、自分の分野では「当たり前」と思っていることが、他の分野においては全く新しい視点だったりすることも多いんです。具体的な例をお話すると。あるメンバーがAIの研究をしていたところ、思ったより結果がでなかった。これはもう諦めるしかないと思っていたところ、全く違う分野を専門とするメンバーのアドバイスにより、異なるアプローチ方法が見つかった。その研究はなくなることなく、今また新たなカタチでチャレンジをしています。違う視点でのアドバイスはもちろん、ちょっとした雑談も直接研究にも活きていると実感しています。またこれは多様性とは別ですが、それぞれ自分の評価に対し、大変シビアです。その分自分の結果にコミットをしていく方が非常に多い。時間軸とアウトプットを各人が意識することで、チームとしても非常に効果の高いアウトプットが出せるようになっているというのが他にない特徴だと言えます。HSARでは、今後更に研究チームを強化すべく、研究者を増員する予定です。メンバーが増えることでさらに良いシナジーが生まれ、研究の幅が広がっていくのではないかと期待しています。
2018年に東京工業大学大学院修了後、日揮株式会社に入社。 クウェート国建設現場駐在、プラント設計IT業務に従事。 その後、2020年に株式会社アジラに参画し、行動認識AIに関する製品開発を担当、IVAソリューション事業部統括に就任、2022年4月には執行役員CTO、2023年3月に取締役CTOに就任。