ついにデータも“AIが創る”時代へ ー生成AIが秘める研究の可能性

2023-02-16

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研究開発

世界トップクラスの行動認識AIをコアとした警備システムを開発するアジラは、2023年2月に更なるAIの精度向上を目的にヒューマンサイエンスを軸とした研究専門チーム・Human Science AI研究チーム(以下、HSAR)を発足しました。本記事では「生成AI」に関する研究の取り組みや今後の展開について、HSAR立ち上げ発起人のアジラCTO・若狭 政啓氏に話を聞きました。

創造性を持つ「生成AI」で広がる研究の可能性

ー HSARでは、「生成AI」の研究にも注力しているとのこと。そもそも「生成AI」とは?

「生成AI」は、名前の通り「ある入力をもとにデータを生成するAI」のことを指します。例えば、過去データや人間の指示を元にAIが自らの学習を通じて、画像や文章、音楽などを生成するというAIですね。まさにクリエイティブなAIです。生成AIは2014年に画像生成GANが発表されて以降更なる研究が進んでおり、急速な進歩を遂げています。AI業界では近年「生成AI」がさらに注目を集めており、日本でも画像生成AIの一般利用が可能となったことを機に「AIピカソ」など画像生成AIが非常に話題となりましたよね。生成AIは技術的にはだいぶ成熟してきており、現在は複数の分野で実用化が進んでいる段階です。「AIが作り出したものをいかに新たな価値へ繋げていくのか」というフェーズまできていますね。この技術を、弊社でも行動認識AIという観点から利用を進めているという段階です。

ー HSARでは具体的にはどのように研究を進めているのでしょうか。

HSARでは、人間の行動を基とした行動データを生成AIが自動生成するという試みを行っています。行動データというのは、例えば「喧嘩をしている」「倒れて動かなくなった」というような人の行動に関するデータのことを指します。このような行動データを基にAIの研究・開発を日々行っているのですが、従来は私たちが実際に行動し記録するというアナログ要素が強い方法でデータ取得を行っていました。カメラを設置してカメラの前で人が実際に何百回、何千回も行動をし、行動データとして地道にデータの蓄積を続けていたという感じですね。AIの精度向上は学習するデータ量と比例します。現在は更なるデータ収集を目的に、生成AIを活用し、過去蓄積した膨大なデータを基にAI自らが新たな行動データを生成できないか、と考えています。そして、生成したデータを用いてまたAIが自ら学んでいく。このような好循環の実現に向け、現在研究を進めています。

新たなAIとの好循環

株式会社アジラ CTO 若狭 政啓氏
ー 研究を進めるにあたって、一番難しいと感じることは?

「AIが生成した人間の行動データが本当に人間らしいのか」というデータをいかに正しく見極められるかが非常に難しいですね。やはりコンピュータサイエンスの技術だけでは「この行動データが人間らしいのか?それとも機械的な動きなのか?」ということをきちんと見極めることは厳しいと感じています。この見極めのためにも、人間科学の研究が必要だと考えています。行動データはAI研究の根幹となるため、本当に人間らしい行動データのみを活用することにより、AIの予測モデルの精度がさらに高まり、それが新しい学習へと繋がっていく。そして、本当に人間の行動を推測できるAIが作り上がっていく、というような循環を期待しています。今はまさに研究段階ではありますが、かなり良い成果が出始めているというところです。生成AI活用に至るまで、私たちは何年間も地道に人間の行動データを蓄積し続けてきました。まさに、人間らしさを追求した膨大な行動データを持つ弊社だからこそ、次なるフェーズに迎えていると感じています。

正しいAI活用が「従来の壁」を打ち破り研究の推進へと導く

ー 従来のデータ取得方法と比較した場合、生成AIではどのような効果が出ていますか。

厳密には明確な数値化は行っていませんが、劇的にデータ生成速度は向上していますね。例えば、正しく検知を行うためには一つの行動に対し一万個以上のデータをつくらなければならないとします。従来のデータ取得方法の場合、2週間ほどは時間が必要となります。一方で、生成AIを活用した場合、わずか1-2時間という短時間でデータ生成が完了します。しかも、従来のやり方であれば必ず人が必要となるため人件費が必要ですが、生成AIの場合はポチッとキーボードを押して、あとは待つだけ。そのため、データ生成に人の労力はかからないんです。データ生成する速度が劇的に改善するだけでなく、コストも抑えられるというメリットも感じています。

ー 人が介在せず、AI自らが精度の高いデータを生成できるようになれば、専門家の皆さんはその分更なる研究へ注力できるようになるという、まさに人とAIの共存ですね。

この生成AIの活用に関しては、この先研究を行う上で一つの転換点であると捉えています。引き続きHSA研究チームでは、更なるAI精度の向上のため、生成AIの活用に関しても研究を進めてまいります。AIの精度向上には、その基となるデータが必ず必要となります。しかし、活用するデータは量だけでなく質も求められます。そのため、データ取得には時間もコストも必要です。データ取得を巡っては、安い労働力をめぐる倫理的な問題も最近問題となっています。もし、AIが自ら正しいデータを作ることができるようになれば、こうした倫理的な問題の解消にも繋がると考えています。

「行動認識AI×生成AI」で社会の課題解決を実現

ー 世界的に注目が集まる生成AIの活用は、今後の研究に大きく影響しそうですね。今後の取り組みについて教えてください。

「AIが自ら創造する」という特性を持つ生成AIは、ここ1〜2年の間で著しい進化を遂げています。生成AIの多くは、綺麗な画像やイラストの生成などエンターテイメントという領域を中心に現在は展開している印象ですね。こうしたトレンドはエンターテイメント領域で今後も続くと考えられると同時に、今度はさらにビジネス領域の課題解決へ広がりを見せると考えられます。まさにその課題解決の領域のひとつに、我々の強みである「行動認識AI」が存在する。そのような未来図を描きながら、アジラでは先行してその未来に向けての研究開発をチーム一丸となり進めてまいります。

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株式会社アジラ
取締役 CTO
若狭 政啓

2018年に東京工業大学大学院修了後、日揮株式会社に入社。 クウェート国建設現場駐在、プラント設計IT業務に従事。 その後、2020年に株式会社アジラに参画し、行動認識AIに関する製品開発を担当、IVAソリューション事業部統括に就任、2022年4月には執行役員CTO、2023年3月に取締役CTOに就任。

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