2022-10-31
2008年、兵庫県西宮市の「阪急西宮スタジアム」跡地の約7万㎡という広大な敷地にオープンしたショッピングセンター「阪急西宮ガーデンズ」。館内外に従前より設置されていた監視カメラの一部(50台)に、AI警備システム『アジラ』を試験導入し、運用テストを進めています。
今回は、阪急阪神不動産株式会社 賃貸事業本部 賃貸事業部 副部長 前田尚紀 氏と、阪急阪神ハイセキュリティサービス株式会社 代表取締役社長 木村浩士 氏にお話を伺いました。
(写真右から)
阪急阪神不動産株式会社
賃貸事業本部 賃貸事業部 副部長
前田尚紀 氏
阪急阪神ハイセキュリティサービス株式会社
代表取締役社長
木村浩士 氏
「阪急西宮ガーデンズ」は、阪神間や北摂エリアを中心に比較的広域なエリアより、多くのお客様にご来店いただいています。不特定多数のお客様が多数来店される大型商業施設でもあり、お客様の「安心安全」を第一に管理運営を行っています。具体的な警備業務としては、お客様の急病対応、駐車場での自動車対応、地震・火災等の非常時の対応等があります。いずれの対応も事案発生時の初動が非常に重要であると考えています。警備員による巡回等は行っているものの、開業当初から、防災センターに設置されている監視カメラ映像から、AI等で異常と判断した場合は自動でアラームがあがるシステムがあれば、管理運営上も初期対応がよりスムーズになると考えていました。
今回、実際にAI警備システムがどこまで使えるものなのか、阪急西宮ガーデンズの監視カメラのうち特に重要度の高い50台に『アジラ』を試験導入し、実証実験を行っています。
『アジラ』の試験導入以前、別の海外企業のAI警備システムを実証実験しましたが、AI学習期間に問題があり、実証実験の結果も思わしくありませんでした。代替案を探していたところ『アジラ』を知り、今まで知らなかった骨格認証という考え方や多くの特許を取得、国内外の賞を多数受賞していること、海外企業とも連携していることを知りました。これは技術面でも期待ができそうだと考え、アジラの木村社長に連絡を取り、情報交換をスタートしました。
その後に、複数の候補物件から阪急西宮ガーデンズを選び、まずは少数のカメラでの実証実験からスタートし、検知性能が一定評価できたため、現場の警備員が監視・アラート発生時の対処を行う運用テストの段階へ進みました。
実際の映像を見て「検知すべきところは検知できているな」と感じています。子供同士の悪ふざけや、深夜時間帯の作業員の動きを検知したりと、思ってもみなかった場面を検知することもありましたが、バージョンアップを重ねた今では一定のレベルに達し、実用に耐える性能に仕上がってきていると感じています。やはり個々の監視カメラの画角に対して、最適化を重ねていただけたことによる部分が大きいのでしょう。現場の警備員からの要望に応えてもらったりと、細やかな対応もしていただいており、本当に助かっています。
日本全体にいえる話ですが、現場の労働力不足、特に警備員の求人倍率が非常に高い状態が続いており、将来の人材確保に強い危機感を持っています。今回の阪急西宮ガーデンズ等の大型商業施設や大規模複合オフィスビルの防災センターに常駐する施設警備では、お客様対応や非常時の緊急対処など、非常に高いスキルが求められます。
今後も継続して、お客様に「安全安心」なサービスを提供していくためには、現状の警備員による人的なサービスに加えて、最新のAIやIOTを活用した管理運営システムが必要であると考えています。『アジラ』の活用を通じて、理想的な管理運営のあり方を描いていきたいと考えています。
阪急西宮ガーデンズにおいては、出来るだけ早い時期に全数(約300台)の監視カメラに『アジラ』を導入して、警備対象となる事案をしっかり捕捉していきたいと考えています。人間が監視カメラのモニターを見て異常と考える判断を、AI単独で判断させるとなると、やはり調整は必須です。また、検知できる画角や画素の範囲を把握して、追加工事としてカメラの配置や台数を最適化させていく予定です。危険な行為や異常事態を細かいものまでより正確に拾うことと、誤検知数を減らすことは相反する場合も多いのですが、AI警備システムの性能向上に加え、アジラ社の高いチューニング技術があれば、最適な閾値(バランス)を設定していけると思っています。
現状ではまだ、オフィスビルでの実証実験は行っていませんが、より実用的な検知が可能になるのではと期待しています。
骨格認証から得られる情報により、「特定の人物」を複数の監視カメラ映像から探し出すことができれば、迷子の捜索等にも大変役に立つと考えています。勿論、顔認証機能が追加されて、手持ちの写真からでも現在の位置が分かるようになればすごいと思います。
また、人間の行動だけでなく監視カメラの映像から、煙や炎を検知して異常発生を知らせる火災感知器の様な機能があれば、即座に現場の状態を映像で確認することができ、警備員の初動をよりサポートできるのでは考えています。
警備ロボットの導入も検討していますが、将来的には移動する警備ロボットに搭載した監視カメラのAI解析により、固定カメラと同様の違和感を検知できたらなあと期待しています。
最期に、人間の場合は、子供がふざけているだけなのか、喧嘩しているのか、一目ですぐにわかります。それは表情や声のトーン、周囲の状況などを複合的に見て、感じ取っているからと思います。そこまで『アジラ』ができるようになったらと思うと、これからが本当に楽しみです。
会社名:阪急阪神不動産株式会社
所在地:大阪市北区芝田1丁目1番4号 阪急ターミナルビル内
代表者:諸冨 隆一(※1)
設立:1947年2月
事業内容:オフィス・商業施設の賃貸、不動産開発、エリアマネジメント、不動産ファンド、マンション・戸建住宅・宅地の分譲、仲介、リフォーム、賃貸管理、土地活用など
公式HP:https://www.hhp.co.jp/
(※1)諸、隆は旧字